「子ども・子育て新システム」を考える(2)

「子ども・子育て新システム」を考える(2)


保育事業が福祉ではなくなる
──── 市町村が保育事業に責任をもたなくなります

保育事業を福祉から切り離すと保護者の負担が増える
サービスを受けられない事態も

憲法25条と児童福祉法

日本の福祉制度は、憲法25条の規定を拠り所にして発展してきました。
「第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」
生活の中で憲法25条の規定を意識している方は少ないかも知れません。しかし、この規定があったからこそ、戦災孤児対策が中心だった児童福祉法が、すべての子どもの権利を守る法律として発展したのです。
児童福祉法は、市町村に保育事業の実施責任があることを定め、保育が必要な子どもを保育所に入所させる責任を明確に規定しています。保育所への入所決定や保育料の設定も市町村が行います。民間の保育所への入所の場合でも、この原則は変わりません。保護者が保育について契約を交わすのは、市町村です。

保護者負担の増大は避けられない

「子育て新システム」が国会で成立すると、保育サービスが児童福祉法から切り離され、福祉事業ではなくなります。市町村には、保育を実施する責任がなくなり、保育の必要度の認定と保育時間などのサービス量の区分の決定をおこない、保育所を紹介するだけになります。
保護者は、入所できる保育所を探し、保育所と直接契約を結びます。保育料は、政府が公定価格を設定します。音楽や体操、特色のある保育などのオプションサービスを認めたり、入学金の徴収を行うことが可能なので、実際の保育料はかなり高くなることが懸念されます。
現行では、所得に応じて負担する応能負担原則が貫かれています。低所得であれば、保育料が無料になるケースもあります。しかし、「新システム」は、保育事業を福祉から切り離すので、保育料は一律負担となります(応益負担)。残業などによって、市町村が認定した保育時間を超える保育サービスを受けなければならない場合、全額自己負担となります。
市町村は、「子ども手当」とともに保育については、「幼保一体給付(仮称)」いう補助金を保護者に給付します。しかし、この給付も福祉事業ではないので、一律の給付になることが予想されます。
このような制度変更が行われると所得の低い人は、保育サービスを受けられなくなるでしょう。

保育所が市場に開放される

変化するのは、これだけではありません。
保育事業を福祉から切り離すもう一つのねらいは、保育所を市場に開放するところにあります。現行制度では、保育所を開設するためには、市町村の認可を受けなければなりません。「新システム」は、国による施設設置の最低基準を廃止し、基準設定を市町村にゆだねるとともに、認可制度を廃止し指定基準さえ満たせば、株式会社でも個人でも保育事業に参入できるようになります。
マンションの一室を施設にしている無認可の保育所や3人の保育士で9人まで子どもをみる「保育ママ」と呼ばれる施設も保育所になることができます。
国が保育所に給付する補助金は、保育のために使用する必要をなくし、株主への配当金や本社への繰り入れを可能にしようとしています。

保育制度と福祉が壊される

国は、多様なニーズに応じた豊かな保育事業の展開をうたっています。しかしそれは、負担できる利用料金の額によって左右されるものになります。
充実したサービスを受けたいのであれば、応分の負担をして保育サービスを受ければいい、所得の低い人は、園庭や給食もない劣悪な施設でそれなりの保育を受ければいいというのが「新システム」の考え方です。
民主党政権は、自公政権の新自由主義的な構造改革を引き継ぎ、憲法25条を焦点にして社会保障を全面的に改変しようとしています。介護保険、後期高齢者医療制度、障害者自立支援制度の次に焦点になっているのが保育制度です。
保育制度は、児童福祉法の根幹をなす制度です。これが福祉から切り離されると児童福祉法は、解体の危機に直面します。保育制度が危ない。福祉が危ない。──進行している事態を伝えいっしょに運動を起こすことが大事になっています。
(おわり)

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