従軍慰安婦問題についての決議案否決の経過

従軍慰安婦問題についての決議案否決の経過


「公党の代表である橋下氏の『従軍慰安婦に関する発言』に対する謝罪と撤回を求める決議(案)」を巡る経過を紹介します。(文責 東芝弘明)

この決議案は、全員賛成で決議を上げたいという思いがあったので、福岡議員とも相談して、厚生文教常任委員会に福岡議員から決議案を提出してもらいました。決議案としたのは、橋下徹氏が、公職としては大阪市長なので意見書には馴染まないという判断があったからです。
議会における決議というのは、議会が具体的な課題に対して議会の意思を表明するというものです。拘束力としては、議会による態度表明に留まります。しかし、それは、ホットな問題に対する態度を表明することで、町民に議会の意思をアピールするという意味をもちます。

橋下氏の従軍慰安婦問題の発言について、国に意見書を提出することもできます。その際は、国連の「人権条約に基づく拷問禁止委員会」の日本政府に対する勧告が参考になるでしょう。日本政府は、拷問禁止条約を守る立場に立って、歴史を修正し元慰安婦の方々に対して心的外傷を与え続けていることに反論し、適切な措置を講じることを求めればいいのです。

私たちは、今回、意見書ではなく決議案の可決をめざしました。委員会に提出した決議案は、「維新の会の共同代表である橋下徹大阪市長」と書いていました。この決議案に対して、保守系であるA議員は、「一自治体の市長である橋下氏に対して意見を述べるべきではない」と言って反対しました。私は、この意見に対して、橋下氏による5月13日の記者会見の状況を紹介しました。従軍慰安婦についての発言は、記者が村山談話についての見解を維新の会の代表である橋下氏に求めた中で行われたものです。安倍首相が村山談話の見直しに言及し、侵略戦争の定義は定まっていないという発言をしていたことが、国政の一つの焦点になっていたので、維新の会の共同代表にも見解を求めたというのが、事実経過です。

かつらぎ町議会でこのような議論が起こる背景には、議会の権限がどこまで及ぶのかという守備範囲の問題があります。今回の橋下氏の発言は、事実経過によって、疑問の余地のないものだったので、保守系議員の議論は、事実経過を踏まえない一般論であり、決議と意見書の性格の違いを踏まえていないものだったと思います。

このような経過があったので、本会議に議員提案した決議案には、事実経過を明らかにするために、また保守系議員にも同意してもらえるように大阪市長という肩書きを外した書き方にしました。かつらぎ町議会の状況では、大阪市長という肩書きを入れると、それを理由に合意が形成できないのは、議論の経過から明らかでした。
議会には、さまざまな状況があります。ときには、事実を踏まえない独特の議論が展開されることもあります。事実を確認して、事実を踏まえた議論を私は大切にしています。事実の持つ力によって、議論を組み立て、第三者が聞いていてもよくわかるように心がけていますが、保守系議員の方々が、結論を決めて議論に臨んだときは、議会外から見るときわめておかしな議論が数の力で堂々とまかり通るケースも生まれます。

経過から見て、私たちの議論の組み立てが間違っていたとは思いません。
決議案は、女性の人権を踏みにじる一点に集中して、公党の代表である橋下氏に謝罪と発言の撤回を求めるものになっています。従軍慰安婦の歴史的な評価にも全くふれず、橋下市長に対しては公職からの辞任を求めることもしていません。それは、かつらぎ町議会の保守系議員の動向を踏まえて、一致点を見出す努力だったと思っています。

今回、保守系議員の方々は、「個人的には橋下氏の発言には怒りを感じる」とも語りました。しかし、同時に本会議場でおこなわれた保守系議員の反対討論は、公党の共同代表である橋下氏を批判するのは、公党に対する介入であり越権行為だというものであり、反対の理由はここにありました。ここまでくると、何が何でもこの決議案には反対するという意志を感じざるをえません。

私は、賛成討論では、問われている問題を全面的に明らかにするという観点に立って賛成討論を致しました。この時点では否決されることは明らかだったので、絞り込まれた決議案の立場よりも広くことの本質を明らかにするものにしました。

保守系議員の方々が、決議案に反対した背景には、安倍首相が、一貫して橋下氏の従軍慰安婦の発言に対して、コメントを差し控え、国連の「人権条約に基づく拷問禁止委員会」の勧告に対して対応しないという態度を取っている問題があると思います。自民党総裁である安倍首相が、明確な態度をとっていれば、この決議案は否決されなかったと思います。

私は、従軍慰安婦問題で日本政府がとっている態度の問題が極めて大きいことを改めて感じました。

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