民設民営の学校給食──債務負担行為の期間は12年間


答申とは全く違う内容だと質疑
町当局が債務負担行為を取り下げ

学校給食運営審議会の答申の命題の一つは
公設のセンター給食への移行だった

かつらぎ町は、12月議会に提出した一般会計補正予算の中の債務負担行為補正のうち、小学校給食業務委託料3億6110万円について、議案の修正を行い取り下げました。
20日の議会最終日、本会議で一般会計補正予算の質疑が行われました。しかし、この債務負担行為の質疑をめぐって会議が中断し、休憩の後延会されました。
翌21日、本会議が続行され、まず議員全員協議会が開かれました。この会議の最終、議会運営委員会の委員長である宮井議員が、債務負担行為のうち、小学校給食業務委託料を取り下げて、学校給食運営審議会へ差し戻すよう提案し、了承されました。

質疑で何が問われたのか

質疑では何が問われたのでしょうか。
債務負担行為は、契約等で発生する債務の負担を設定する行為で、予算とともに議会に提出する必要があります。
小学校給食の業務委託料は、平成22年度から33年度の12年間です。2年間は準備期間、民設民営での給食実施は10年間というのが教育委員会の計画です。
教育委員会は、質疑の中で次のように答弁しました。
「民設民営の10年間の中で中学校給食も実施したい。給食費250円のうち、50円については、教育委員会が年間760万円の予算を組んで保護者負担を軽減したい」
しかし、この説明は、11月26日に教育委員会に提出された「学校給食運営審議会」の答申(答申PDF)の基本点とは、大きく食い違うものでした。
諮問は、民設民営の学校給食をどのような内容で実施するのかを求めたもので、将来の学校給食のあり方を根本から問うものではありませんでした。
審議会では、協議の冒頭この諮問のあり方が問題になり、議論の結果、審議会には、「諮問に対して答申を行うとともに教育長に対して給食のあり方を建議する性格を合わせ持っている」ことが確認され、将来の学校給食のあり方についても答申の中に盛り込むことになりました。
その結果、答申の第2章「基本的な考え方」の中に「民設民営による学校給食においては、特に安全安心に充分留意する。近い将来、行政の責任において公設によるセンター方式に移行し中学校 給食も含めて実施する。」ことが盛り込まれました。
さらに第3章「民設民営による学校給食の運営について」のところでは次のように書かれています。
「民設民営による学校給食は、町長が平成21年9月議会で『財政問題を大きな理由として、まずは民設民営による学校給食を開校した小学校から実施する。しかし、近い将来、中学校給食も含め考える必要がある。学校給食はセンター方式にすべきだと考える。』と答弁したように、先ず民設民営でスタ ートし、近い将来、中学校給食も含めた学校給食を公設によるセンター方式 で実施する。そのために、審議会で引き続き協議するとともに教育委員会に対しては早急に移行計画の策定を求める。
なお、民設民営の学校給食では、労働者派遣法等の関連法規により栄養士が業務委託した民間業者の調理員に直接指示できないという課題がある。このことを克服するには、公設によるセンターの設置が必要である。また、民設民営の学校給食を実施する市町村に対して、和歌山県は栄養士の配置を行わないので町で雇用しなければならない。」
なぜ民設民営から公設のセンターに移行すべきなのか、公設のセンターへの移行とともに中学校給食を──これが答申の一つの命題でした。
今回の債務負担行為の質疑の中で、教育委員会は、11年後に公設のセンターを建設するとは一言も説明せず、教育長は、「民設民営でもいい給食を実現する。和歌山市でも民営化される。民営化は時代の流れ」だと答弁しました。
また、10年間の委託については、「7年間の委託では委託費が高くなる。10年間の方が委託費が安い」「中学校給食については、実施を求める声が強いので民設民営の中で実施したい」
民設民営による学校給食を10年間固定する。そのかわりに中学校給食を実施する。食材料に補助金を出して保護者負担を軽減する。そうすれば、センター給食への移行はしなくてもいい──一連の答弁からこういう疑念が浮き上がります。

教育委員会の認識はどうなっているのか?

現時点での教育委員会の認識を書いておきましょう。
教育委員会は、審議会の答申の趣旨は十分踏まえており、何ら矛盾はないという態度です。また公設のセンターへの移行は、諮問にはなかった問題で、答申の中心課題ではないと言っています。
こういう認識だからこそ、平気で12年間の債務負担行為の議案を出してきたということでしょう。
答申は、教育委員会が事務局に入って一緒に作ったものでした。わずか1か月でなぜ大きく変化したのか。そこには何が横たわっているのか。──次回はこれらを見ていきましょう。

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