7年なら高く10年なら安くなるという委託料とは何か?


民設民営の学校給食
内容を明らかにするのはこれからの課題

そもそも論でいえば、今回の学校給食の民間への委託契約は、調理と配送、食器の回収と洗浄なので、普通は1年契約だと思われます。ただし、準備期間が1年3か月(2年度にまたがる)あるので、3か年の債務負担となるのではないでしょうか。
しかし、教育委員会が提出した債務負担行為は、12年間に及ぶ異例の長さでした。12年間は町長の3期分にあたります。なぜ、教育委員会は、これだけ長期の債務負担行為を設定したのでしょうか。今回はこの問題を一緒に考えてみましょう。

仕様書の作成を業者と相談したのか?

教育委員会は、学校給食運営審議会から答申が提出されると、仕様書の作成に入りました。仕様書は、業務委託の内容を細部にわたって規定するものです。
教育総務課長は、議員全員協議会で、「米飯3回、パン2回を考えています」という説明を行っています。この説明は、業者との間で、仕様書を相談しながら作成した可能性を浮き彫りにするものです。
この辺の事情が明らかになれば、12年間に及ぶ委託契約や民間委託の期間に中学校給食を前倒しで実施するという方針の変更理由が明らかになるように思われます。

委託費の謎解きはこれからの課題

「7年間では委託費が高くなり、10年間では委託費が安くなる」という説明については、謎解きが必要です。
民間業者への委託の内容は、調理と配送、食器の回収と洗浄です。委託費がこれだけに限定されるのであれば、7年であろうと10年であろうと1年間の委託費には違いはありません。
「7年では高くなり10年では安くなる」というのは、委託費に建設コストを加わえている可能性があります。

誰が負担? 施設建設費

民設民営の学校給食を実施するには、業者自身が、学校給食用の施設を用意する必要があります。これは、「学校給食の衛生管理基準」を遵守しなければならないからです。仕出し業者が、同じ施設で学校給食の調理を行うことは、許されません。
業者にとって、この負担は大きいと思われます。
民間業者の施設建設費を考慮し、委託費の中に組み入れる──町は、こういう考え方を採用したのではないか。12年間の債務負担行為は、施設を建設する民間業者の強い要望ではないのか。──こういう疑問が湧いてきます。
和歌山県内の民設民営の学校給食は2施設だけです。民設民営は特異な例です。しかも、この2施設の委託は、調理と配送を中心としたものなので、施設建設費は含まれていません。
教育委員会の説明が問われています。

民設民営の給食──本音は固定化?

民設民営の学校給食についての教育長の答弁は、一貫しています。
「民間の病院でも学校でもいい所はある」「民設民営でもよい内容の給食を実施すれば、公設とほとんど変わらない」「民間委託は時代の流れ」「学校給食の民間委託は禁止されていない」
発言に流れているのは、民間委託でもいいではないかというものです。
全面改正された学校給食法は、21年4月から施行されました。改正は、栄養士の役割をさらに重視し、栄養士による一元的な管理を規定しています。
民設民営の学校給食の最大の問題は、民間に雇用された調理員を町の栄養士が指導できないということです。これでは、栄養士を通じて学校給食の充実をめざす法の精神が生かされません。
教育長の一連の発言は、学校給食法の根本的な精神からはずれるものです。

民設民営から公設公営へ

学校給食運営審議会答申は、民設民営でスタートするのはやむを得ないが、できるだけ早く公設の学校給食に移行するよう求めました。これは、真剣な議論を重ねた結論でした。
今回の債務負担行為は、審議会答申と整合性があるのかどうかが根本的に問われています。
日本共産党は、民設民営の学校給食から出発して、公設公営の給食へ移行することを求めます。栄養士と調理員の方々が、子どもたちのために豊かな給食を求めて日常的に努力する、この仕組みが学校給食発展の基礎となります。出発の時期だからこそ、原点に立った議論が重要だと考えます。

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